少子高齢化が社会問題となっている日本。働き手不足が深刻な問題となっていますが、コールセンター業界でも、人材不足は長年続く大きな課題の1つです。
近年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によって在宅コールセンター化が進むなど、コールセンター業界には大きな変化がありました。
そこでこの記事では、コールセンターの最新動向から、あらためて今後の課題や解決方法について考えていきます。
まずは、一般社団法人日本コールセンター協会(CCAJ)がおこなった「2020年度 コールセンター企業 実態調査」から、コールセンターの最新動向を見ていきましょう。
近年、コールセンターの需要は高まり続けており、調査結果からは2018年度から2020年度の3年間で、売上・従業員数ともに右肩上がりに上昇していることがわかります。
下でグラフを見てみましょう。
売上は、2018年度は1兆75億73百万円でしたが、2020年度は1兆1,531億93百万円に増加。
総従業員数も年々増加しており、2018年には169,222名でしたが、2020年には235,108名と、65,886名増加しています。
コールセンター需要の増加は、年間コール数からもはっきりと見てとれます。
年間コール数はアウトバウンド・インバウンドともに増加しており、特に変化の大きいインバウンドの場合、年間コール数は倍以上となる21,831,000コー ルから55,845,000コールに増加しています。
また、調査からは在宅コールセンター導入を進める企業が増えていることもわかります。
在宅テレコミュニケーターを採用する企業は2019年度よりも11社増加し、28%に。
また、今後採用予定の企業も増加するなど、コロナの影響による変化が生まれています。
コールセンターが抱える課題はいくつもありますが、代表的な課題は以下の5つです。
ここからはそれぞれの課題について、詳しく解説していきます。
コールセンターの大きな課題が人材不足です。
クレーム対応などストレスが多くなるため、離職率が高く、定着率も低いためオペレーターの人員数が足りていないという現状があります。
しかし、コールセンターでは「つながりやすさ(応答率)」が最重要KPIのひとつ。なぜなら、つながりやすさはお客様の満足度に直結するためです。
人が足りないことで、電話がつながらない。そして、電話がつながらなかったことで、購入をやめてしまう、もしくは他社製品に乗り換えてしまう…このようなことを起こさないためにも、人材不足に歯止めをかける必要があります。
これまで企業への問い合わせといえば電話での問い合わせが主流でしたが、デジタル化の進んだ現代では電話のほかにも、メール・チャット・WEB問い合わせなど問い合わせの方法が増加しています。
これには顧客が気軽に問い合わせしやすくなったというメリットがある一方、スムーズに対応できない場合、顧客満足度を下げてしまう恐れも。
多様化に対応するためには、それぞれの問い合わせ方法に合ったマニュアルの作成や教育が求められるでしょう。
問い合わせ内容の多様化によって、コールセンター業務は複雑化している傾向にあります。
このような中でのオペレーター採用・育成は簡単なことではありません。
採用が難しく、また、採用できても定着せずに辞めてしまうなどの課題があります。
コロナの影響により、在宅コールセンターを導入する企業が増加しています。
しかし、パソコンや電話機などの機材の用意やセキュリティ体制など、在宅コールセンターへのシフトチェンジは簡単ではありません。
テレワーク・リモートワーク下でも応対品質を落とさない高品質なコールセンター運営のためには在宅勤務に対応した体制の構築をおこなう必要があります。
オペレーターが退職してしまう理由として考えられるのは、以下のようなものです。
オペレーターのストレスとなるのがクレーム対応ですが、そのほかにも教育体制がしっかりと構築できていないという点も離職率が高くなる原因の一つ。
離職率が高いと人材が不足するのはもちろん、優秀な人材が育ちにくくなってしまいます。
ここからは、コールセンターの課題の解決策について詳しく解説していきます。
コールセンターは進化しており、現代では多くの業務効率化ツール・新機能が登場しています。
今やコールセンターに欠かせないシステムとなったCTI(パソコンなどのコンピューターと電話・FAXを連携させるシステムのこと)を導入するだけでも、業務を大幅に効率化できます。
また、シートマップ(座席表)や音声文字起こしサービスなどもコールセンターが抱える課題解決に大きく貢献。
シートマップ(座席表)を使えば在宅環境でもオペレーターの管理がしやすくなり、音声文字起こしサービスを活用してベテランオペレーターの話法を共有すれば新人オペレーターの応対スキルを向上させることができます。
システムの活用によって効率化が進めば少ない人材でも無理な負担なく業務をおこなうことができ、離職率の低下や人材不足にもつながるでしょう。
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AIを活用すれば、多様化する顧客からの問い合わせにも対応しやすくなります。
自動化で人材不足の改善を図ったり、オペレーターのモチベーションが下がりがちな単調な作業を任せたりなど、AIの活用方法はさまざま。
チャットボットの導入もその一つで、オペレーターが対応せずとも解決できる「よくある質問」などはチャットボットが対応することで、対応時間の拡大や問い合わせ数削減に対応できます。
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BCP対策とは、災害など緊急事態が起きた際に、被害を最小限に抑えながら運営を続けていくための対策のことです。
3密の起こりやすいコールセンターでは、コロナの影響で「在宅化」というBCP対策が注目されるようになってきています。
在宅化で懸念されるセキュリティの課題については、VPN接続やウイルス対策ソフトの導入などのシステムの導入や、社内ルールの周知・教育などによって対策することでスムーズに進めていくことができるでしょう。
人材不足や、オペレーターの採用・育成などについては、コールセンター運営の委託が有効な解決策となります。
コールセンター業務を代行する企業に委託すれば、自社で人材を確保する必要はなく、さらに高品質でスピード感のある対応を顧客に提供することができます。
コールセンター業務のアウトソーシングについては、人材不足が課題となっている企業のほか、これからコールセンター立ち上げを検討している企業にもおすすめの選択肢です。
企業とお客様をつなぐタッチポイントであるコールセンターは、企業の顔ともいうべき重要な役割を担うもの。
今ある課題を一度にすべて解決することは難しいかもしれませんが、一つひとつしっかりと対処していくことで、業務効率化や顧客満足度の向上につなげることができるでしょう。