お客様からのお問い合わせや寄せられたクレームに、オペレーターが電話で対応する「コールセンター」。
近年は通信手段が多様化したことで、メール・チャット・WEB問い合わせなど幅広いツールによるコンタクトが可能となったことから、コンタクトセンターと呼ばれることもあります。
しかし、コンタクトできるツールが増えたとしても、オペレーターが一人ひとりのお客様に丁寧に対応できるコールセンターは企業にとっては変わらず重要な役割を持つものです。
今回は、そんなコールセンターの歴史について詳しくご紹介します。
「ワトソン君、用事がある!ちょっと来てくれたまえ!(Mr. Watson! Come here, I want to see you!)」
電話を発明したアレクサンダー・グラハム・ベルが言ったこの言葉が、電話を通った人類最初の言葉です。
コールセンターの歴史は、電話の歴史でもあります。
1876年に電話が誕生してから145年(2021年現在)になりますが、ここからは電話の誕生にも触れつつ、コールセンターの歴史についてご紹介していきます。
電話は1876年、アレクサンダー・グラハム・ベルによって発明されました。
実はベルよりも先にアメリカやフランス、ドイツの発明家が電話の研究をしていましたが、電線を使って人の声を直接送るというアイディアを考えたのはベルが最初だと言われています。
その後、1878年にエジソンが電話を改良し、今使われているような聞き取りやすい電話へと変化していきました。
1890年には、日本でも電話サービスが東京・横浜で始まります。
同年、逓信省(ていしんしょう:かつて日本にあった通信・郵便を管轄する中央官庁)が開始した電話番号案内のサービスの「104」は21世紀となった現在でも使われています。
開始当初の契約数は東京で237、横浜で45でしたが、その後は経済の成長に伴い契約数が増加。
第二次世界大戦で打撃を受けつつも戦後復旧し、1970年代には家庭用電話機の導入が50%を超えました。
一般にも広く使われるようになったことで電話は、生活はもちろん、ビジネスにおいても非常に重要なコミュニケーションツールへと変化していきます。
この頃になると、企業に対するお客様のお問い合わせやクレームが、電話を介して寄せられるようになってきました。
そこで、対応の効率化のために窓口の一本化を開始。現代につながる形の「コールセンター」が誕生したのです。
諸説ありますが、一説では1985年以降にNTTによって設置された電話案内の総合窓口が最初と言われています。
初期のコールセンターの業務状況はというと、現代とはまったく異なるものでした。
こぢんまりしたオフィスにダイヤル式の黒電話が10台ほど並び、大きな呼び鈴が『リーン、リーン』と鳴り響くと女性スタッフが電話を取って、コールセンター業務が開始。複数の企業から依頼されている場合は異なる企業名が飛び交うこともあり、異様な光景だったと話す人もいたようです。
また、コールセンターの誕生に伴い「企業に代わって電話対応を代行するサービス」も登場しました。電話口での対応によってお客様が感じる印象は大きく変わるため、訓練された女性スタッフが対応することで顧客満足度の向上を目的としていたようです。
そしていよいよ、コールセンターに大きな技術革新をもたらしたCTI(Computer Telephony Integration)の登場です。
1990年代のCTIの登場によって、これまでアナログで、すべて手作業でおこなわれていた作業を、システムが代わりにおこなうことができるようになりました。
これまでは電話が鳴ったらオペレーターが受話器を取って対応していたのが、ヘッドセットを付けてコンピューターを操作し、通話に対応するという流れに変化。
また、コンピューターと接続したことで、通話履歴をデータとして記録できるようになりました。お客様との履歴を確認しながら、より細やかな対応ができるようになったのです。
CTIとは、パソコンなどのコンピューターと電話・FAXなどを連携させるシステムや技術のことです。
コールセンター機能の「土台」のようなもので、現代のコールセンターには欠かすことのできない重要なシステムの一つ。
PBX(構内電話交換機)・CRMシステム(顧客管理システム)・SFA(営業支援ツール)などさまざまなツールと連携させることで、業務効率をより高めることができます。
CTIについては下記の記事で詳しく解説していますので、よろしければこちらも合わせてご覧ください。
⇒CTIとは?クラウド・オンプレの違いと選ぶときの比較ポイント7つ
1990年代にCTIが登場してからも、さらにコールセンターの機能は進化し続けました。
1990年代後半〜2000年代にかけて登場したのが、CRM(Customer Relationship Management)です。
CRMは「顧客関係管理」などと訳され、簡単にいうと、お客様中心にビジネスを展開し、利益の最大化を目指す手法のこと。
これまでは、コールセンターといえば問い合わせやクレームへの電話応対業務が主なものでしたが、CRMの導入が進んだことによって「顧客を正確に理解し、良好な関係を作り上げていく」という重要な役割を担うようになったのです。
2010年代には、インターネットを活用することで場所を気にせずPBX(内線や外線を転送する機能)を利用できる、クラウドPBXが登場します。
これまでは購入や設置費用、メンテナンス費用などのコストが掛かっていたPBX導入を手軽におこなえるようになったことで、多くの企業が導入を進めることとなりました。
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⇒クラウドPBXの3つの規制丨法律改正の理由や審査について詳しく解説
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により在宅コールセンターを導入する企業も増えていますが、テレワーク・リモートワーク環境では課題もつきもの。
現代のコールセンターでは、これまでご紹介したような機能に加え、「シートマップ(座席表)機能」「音声データ文字起こし(音声テキスト化)機能」「チャット機能」など、全体的な業務効率化や、テレワーク・リモートワークの課題解決のための機能が数多く生まれています。
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⇒コールセンターでのチャットの活用について丨メリットや種類を解説
⇒コールセンターの音声データ文字起こしサービスとは?特長や解決可能な課題
今多くの業界で注目されているAIによる業務効率化は、コールセンターやコンタクトセンターでも注目されています。
現時点では本格的な導入にはまだ至っていないものの、将来的には業務効率化やコスト削減につながるのではないかという推測も。
コールセンターで使われているAIとしては、AIチャットボットがあります。
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⇒チャットボットが「コールセンター」になれない理由とは?進化と将来性を解説
ワトソンを呼ぶ一言から始まった電話機は今では世界中に広がり、人々の生活に欠かせないものとして、そして企業の需要なマーケティングツールとして、日々活用されています。
そして、コールセンターの機能は今もなお進化を続けています。
価値観が多様化したことで、市場も細分化されている現代。技術が発達したことで、便利な機能をより安価に、より手軽に導入できるようになりました。
顧客との関係向上を図るため、業務効率化のため。そして、これからの新時代に備えるためにも、進化したコールセンターの新機能を導入するのもおすすめです。