頭に「03」がついた番号から電話がかかってきたとき、どんなことを思い浮かべますか?
多くの人はこの「03」という数字を見て「東京から電話がかかってきた」と思うのではないでしょうか。しかし、実はスマートフォンからかけられていた電話かもしれません。
クラウドPBXの電話サービスを使えば、着信側の端末に発信側本来の電話番号ではない固定電話番号を表示させることができるのです。
PBX、IP-PBX、クラウドPBXなどの電話サービスはビジネスで使用するうえでは非常に便利なものですが、その便利さゆえに悪用されてしまうことが増加し、総務省によって規制が強化されることとなりました。
この記事では、クラウドPBXの規制や法律改正に至った理由、クラウドPBX導入のための審査について詳しく解説いたします。
クラウドPBXとは、インターネット上でPBXを利用できるサービスのことを指します。クラウドであるため場所を気にせず使用できること、安価に導入できることがメリットです。
PBXとは電話回線の交換機のことで、オフィスに設置することで内線同士の相互接続をしたり、外線発着信などをおこないます。
PBXの場合、複数拠点ある場合は拠点ごとにPBXを購入して設置しなければいけないことや保守切れの場合の買い替え、メンテナンスの依頼、回線の増減や設定などコストがかなりかかってしまうことが問題でした。
このようなPBX導入の障害を取り除き、コストを抑えて手軽に導入できるようになったのがクラウドPBXです。
クラウドPBXは現在、さまざまな企業で導入が進んでいます。
クラウドPBXは、ビジネスで活用するには非常に便利なサービスです。出張やリモートワーク・テレワーク、営業などで外部からスマートフォンなどを使って電話をかける場合でも、会社の番号から電話を発信することができます。
機器の購入や管理も不要で、事業拡大や組織変更にも柔軟に対応できるという強みがあります。
また、クラウドPBXは内線電話として設定した端末間同士の通話は無料になるため、インターネット回線さえあれば内線通話が世界のどこにいても無料でできます。
非常に便利なクラウドPBXが規制されてしまったのは、その便利さゆえに悪用されてしまうケースが多発したことが原因です。
クラウドPBXを使えば、実際には東京にいないのに「03」の固定電話番号と表示させたり、「090」と表示させ携帯電話番号からかけていると思わせたり、「050」のIP電話からかけたと装うこともできてしまいます。
実際、転送電話サービスを悪用した悪質な勧誘があったと消費者からの苦情も寄せられており「不正利用の温床になる」として、不明瞭だった転送電話サービスのルールを明確化させることを目的に規制が決まりました。
普段、私たちは当たり前に「電話番号」というものを使用していますが、実はとても価値のあるものです。
「03」なら東京、「06」なら大阪など電話の発信元の地域がわかりますし、「090・080・070」なら携帯電話などからの電話、「0120」は着信課金サービスからの電話など、サービスを識別することもできます。
また、たとえばオフィスの電話機など、固定電話は電話機の設置場所を固定して利用されているため利用者の住所も特定されています。電話先の相手が誰だかわからない場合でも、一定の社会的信頼性はあると考えられます。
国民の多くがその価値を信じ、信頼している固定電話番号だからこそそれを悪用する人間が現れてしまい、規制強化に至ったのです。
では実際、どのような規制がおこなわれたのでしょうか?
ここからは、クラウドPBXで固定電話番号を取得する際にどのような規制があるのかを詳しくご紹介します。
手軽で便利なクラウドPBXはオレオレ詐欺や振り込め詐欺などの犯罪で悪用されてしまうことが多くありました。
そこで、今まで長い年月をかけて培われてきた固定電話番号の信頼性が損なわれてしまうことのないよう、総務省は平成30年9月に「固定電話番号を利用する転送電話サービスの在り方」を発表。
この中でクラウドPBXで固定電話番号を取得する際の条件について詳しく書かれていますが、中でも注目すべきであるのが利用者の住所確認です。
今回の規制により、該当する地域に住んでいなければクラウドPBXで固定電話番号を取得することができなくなりました。
これはたとえば「03」の固定電話番号を取得したい場合であれば、東京23区・狛江市・調布市に住んでいなければ取得できないということです。
また、クラウドPBXにはアプリをインストールするのみで導入できるものと、クラウドPBX用アダプターの設置が必要なものがあります。
アプリのみのタイプは050番号のみ利用可能で、固定電話番号を使用したい場合は、クラウドPBX用アダプターが必要です。
なお、すぐに条件を満たすのが難しい場合でも3年間の経過措置があるため、期間内に対策しましょう。
緊急時に使用される電話番号である「119」や「110」など、下記のような番号はクラウドPBXからの発信はできません。
一体なぜクラウドPBXで緊急通報ができないのかというと、インターネット回線を利用しての電話であるため、位置情報を取得できないことが理由です。
固定電話やスマートフォンなどからの電話の場合、設置場所やGPSの位置情報から電話の発信場所を特定することができますが、クラウドPBXの場合は通報者の位置情報が実態と異なることで人命救助が犯罪捜査に支障をきたしてしまう恐れがあるため、発信不可となっています。
クラウドPBXを導入する際には利用者の住所や氏名などの確認の徹底のほかにも、信頼できる事業者であるかどうかの審査が必要となります。
審査期間は基本的には短期間で、審査をおこなう通信事業者によっても異なりますが、早くて数時間〜長くても2営業日ほどです。
審査のための提出書類や、信用調査会社による審査がおこなわれますが、収益化していない個人事業主や設立したばかりの法人、過去に自己破産経験がある場合なども審査に通るケースが多いです。
詐称やよほどのマイナスがなければ審査が通ると考えていていいでしょう。
悪用が多く見られたことでクラウドPBX導入に新たに条件が追加されましたが、「取得する番号区画内に利用者の住所があること(本人確認)」「クラウドPBX用アダプターの設置」さえクリアすれば、問題なくクラウドPBXの導入が可能であるため、ビジネスで利用するうえでは何の問題もありません。
むしろ今回の規制によってクラウドPBXが悪用されてしまうことがなくなったことで、企業はより安心してクラウドPBXを利用できるとも考えられるのではないでしょうか。
今後クラウドPBXを導入予定という方は法律や審査についてあらかじめ確認しておき、トラブルのないスムーズな導入を目指しましょう。