世界的に圧倒的なユーザー数を誇るフェイスブックが、近年注力している「メタバース」を皆さんはご存知でしたか?
メタバースとは、仮想空間でさまざまな人と自由に交流や活動ができるサービスです。
フェイスブックは、メタバースに対して推定50億ドルを規模の予算を見積もっていることが明らかになりました。
世界中が注目するメタバースの技術は、今後さまざまな事業で活用されることが予想され、コールセンターもその対象の一つになるかもしれません。
本記事では、フェイスブックが推定50億ドル投資したメタバースとは何かをご説明し、メタバースがコールセンターの将来に与える影響を解説していきます。
メタバースは英語の造語であり、「meta(超)」と「universe(宇宙)」を組み合わせてつくられたものです。SF作家ニール・スティーヴンスンの作品「スノウ・クラッシュ(1992年)」に登場した、仮想空間サービスが由来とされています。
メタバースは、ネット上で構築された3次元の空間であり、同じ仮想空間にいるユーザー同士でゲームを楽しんだり交流したりすることが可能です。
将来的に、教育コンテンツやオンライン会議システムに活かされることが期待されており、フェイスブック社やマイクロソフト社などのビッグテック社も開発に乗り出しています。
代表的なメタバースは、世界的な人気を誇るEpicGames社の「フォートナイト」や、任天堂の「あつまれ どうぶつの森」が挙げられます。かつては、Linden Lab社の「セカンドライフ」や、サイバーエージェント社の「アメーバピグ」などが人気を集めていました。
最近では、家庭用ゲーム機やPCのスペック向上により、さらに繊細で高速通信可能なサービスが誕生しています。
メタバースは、ユーザー同士が同じ仮想空間を共有できるゲームに限らず、現実世界と仮想空間の双方で同じオブジェクトを扱えるサービスなどにも活用可能です。
2021年7月28日、フェイスブック社のCFOデビッド・ウェナー(通称ウェナー)により、メタバース事業への取り組みに数十億ドル規模の予算を見積もっていることが明らかになりました。
調査企業エバーコアISIのアナリストは、その予算規模が推定50億ドルに及ぶと予想し、世界中から話題を集めました。
ウェナーは、VR/AR部門「Reality Labs(FRL)」を総括するアンドリュー・ボスワース(通称ボス)にメタバースプロジェクトを任せると発表。ボスはメタバースについて、「仮想空間内の移動を、自分の部屋から別の部屋に移動するくらい簡単にしたい」と語りました。
同社はメタバース事業に対して、求人ポータルで700以上のAR/VRスタッフを募るほど注力している状況です。ウェナーは、「次の段階として、5年以内(2026年まで)に、ソーシャルメディア企業ではなく、メタバース企業と見られるように展開していく」と語っています。
フェイスブック社は、メタバース技術を取り入れたバーチャル会議室「Horizon Workrooms(ホライズンワークルーム)」を2021年8月に発表しました。
ホライズンワークルームは、最先端の技術を取り入れたVR「Oculus Quest 2(オキュラスクレスト)」を使用し、仮想空間で会議やセミナーなどをおこなえるサービスです。2021年9月時点では、β版アプリを無料で体験できるようになっています。
ホライズンワークルームの特徴を簡単にまとめると以下のようになります。。
Zoomなどのオンライン会議システムと異なり、会議は仮想空間内・アバター同士で行われます。アバターの動きはユーザーの動きがリアルに反映し、音声に合わせて口の動きも連動するため、現実世界で対面して会話しているような感覚を味わえるのが特徴です。
仮想空間内でPCの画面をホワイトボードに表示できるため、資料の共有やプレゼンが現実世界に近い状態になります。VR空間では最大16名で同時アクセス可能となっており、VRハードウェアなしでも最大50人までのビデオ会議として利用可能です。
また、音の遠近感と立体感の表現に優れており、大勢が参加する会議でも、隣の席に座った人同士で現実世界のような鮮明な会話が実現します。従来のオンライン会議システムよりも現実に近い会議やセミナーを実現するのがホライズンワークルームです。
メタバースの技術は、ゲームや会議システムだけでなくコールセンターの業務にも導入されています。
昨今におけるコールセンターは、働き方改革によってリモートワークを導入する企業も増えていますが、「業務効率の低下」「新人オペレーター教育の質の低下」「コミュニケーション不足」などが課題とされています。
そのようなコールセンターの課題を解決できるのが、仮想化システムのメタバースがなのです。
フェイスブック社のホライズンワークルームなら、在宅勤務中のオペレーター同士が一つの空間に集まって業務を行うことが可能です。
各オペレーターの動作がリアルタイムで反映されるアバターと、現実世界にあるPCの画面表示により、仮想空間での業務可視化が実現。リモートワークの懸念とされるチーム内のコミュニケーションも、バーチャル会議室内の臨場感のある会話で効率化を図ることができます。
ホライズンワークルームは、2021年9月時点でまだβ版ですが、コールセンターの働き方改革に活かされる日がくるかもしれません。
マイクロソフト社は、仮想空間に現実世界とそっくりな世界を創造する「デジタルツイン」の実現を目指しています。そして、「より高度で双方の世界が繋がるサービスがメタバースである」と代表取締役社長の榊原彰氏が話しました。
マイクロソフト社は、同社のクラウドコンピューティング上に構築されたMRプラットフォームを使い、遠隔にいる人でも仮想空間で再現されたオブジェクトを実際に操れる「空間を超えた協業」の実現を計画中。
同社が開発した「Microsoft HoloLens(マイクロソフトホロレンズ)」は、仮想空間に映し出された製品を使った顧客対応や、場所を問わず働ける環境の創出するハードウェアとして注目されています。
コールセンターアウトソーシングの「ベルシステム24」と、イタリアの家電ブランド「デロンギ」は、Microsoft HoloLens2を使った仮想化システム「コールセンター バーチャライゼーション」の開発・研究中です。
2社共同開発の仮想化システムでは、コールセンターで取り扱う製品を仮想空間に映し出すことで、オペレーターは実際に製品が目の前にあるかのような顧客対応ができるようになります。
ホロレンズ2は、物理的にスペースが足りないリモートワーク化でも実際に商品が手元にあるかのような業務が実現します。コールセンター本社でなければできない業務をメタバース技術でできるようになることで、働き方の多様化に適用できる企業への成長が望めます。
メタバース技術を応用すれば、仮想空間にチーム全員が集まり、複数名でのコールセンター業務ができるようになります。
リモートワークでは、チーム間や社員間のコミュニケーション不足が懸念されますが、仮想空間では、実際にオフィスにいるかのようなコミュニケーションを図ることが可能です。たとえば、本社にいるチームマネージャーと自宅で在宅ワーク中の従業員が、仮想空間で臨場感のある会話をすることができるため、新人教育などにも活かせます。
また、メタバースに用いられるアバター機能を活用したバーチャルコールセンターの実現も考えられます。ホライズンワークルームのように、一つの仮想空間にチームで集まれば、連携力が強化され、一体感が生まれるでしょう。
仮想空間で人と人の交流や活動ができるメタバースは、フェイスブック社が莫大な投資をするほど世界的に注目されているサービスです。
フェイスブック社は、メタバース事業への転換を本格的に進めており、ホライズンワークルームのような業務効率化をサポートするソフトウェアが徐々に普及していくと考えられます。
コールセンターにおいては、メタバース技術を取り入れることで、仮想空間にある製品を扱った顧客対応やチーム連携の強化などが期待されています。
現在、さまざまな企業が強大なメタバースプラットフォームの構築に力を入れています。コールセンターの将来を変えるかもしれないメタバースは、これから目が離せない存在です。